銀色に輝く破滅の欠片
休日の朝、洗濯をしてから本を読み始めた。
読み終わったのは夕方。
ああ…休みが終わってしまった。
一日中座りっぱなしで身体が固まってる。目も痛い。
感じる精神の消耗と疲労に思考がまとまらない。
でもそれにもまして、この咽喉に何かが詰まったようななんともいえない気持ちはなんだろう。
視覚があの家の秘められた部屋の中で埃と暗闇に閉ざされているような気がする。
目の前でのろのろと回る淡いモノクロのフィルムの中に、血のように赤い薔薇が一枝捨て置かれている。
銀色の鏡の破片が散らばる古ぼけた床の上に彼の金色の巻き毛が時折り光を弾いて見えるような気がする。
そんな幻想が頭の中をかすめては消えていく。
彼はそれでは幸せだったのだろうか?
思うがまま自分の魂を切り売りしては姿を変え、それでも懸命に美を追求しようとした幼い芸術家だったのだろうか?
無邪気で残酷な情熱はやはり無意味だったのか?
これは作家がひとつの断片から生み出したもの。
感じる温度差は、舞台上と客席の間を隔てる空間のせい。
「ドリアン・グレイの肖像」はどこか淡々と流れる独白映画のようでもある。
そして無性に心掻き立てられる魔力も持っている。
家にあった一輪だけの薔薇のドライフラワー。
まるでこの本を象徴しているような気がしました。
by aquadrops | 2009-06-22 22:51 | Book