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「陽炎の辻」っていいなぁ

先日の土曜スタジオパークは次の木曜時代劇「風の果て」の番宣でした。
佐藤浩市さんは好きなので見たいなと思っているのですけど。
それとは別に、やっぱり…かなり複雑です(;_;)

「陽炎の辻」が終わってしまったという実感はまだあまりないんです。
ただ、ぽっかりと胸に穴が空いたようで、拍子抜けしています。
じわじわと淋しい気持ちが募ってくるのかな。

自分の日記を読み返してみると、今年の春3月の始めに最初の「陽炎の辻」ドラマ化のニュースを書いていました。
初めて聞いたときは、土方さん以来の耕史くんの時代劇が見れる!とそれが嬉しくて大喜び!

興奮が落ち着くと、次に興味が沸いたのは耕史くんが演じる「坂崎磐音」という人物。
「縁側で年寄り猫が日向ぼっこをしているような」とか「春風駘蕩とした」とか「居眠り剣法」とか、不思議な文字が並んでいるのを見て、武士なのにどうして?と興味は深まるばかり。

原作本を手にすると、面白くて面白くて…なんで今までこのジャンル、この作家の小説を読まなかったんだろうとそればかり思いました。
耕史くんが演じてくれたからこそ出会えたこの幸運に、感謝感謝☆☆(柳次郎風)


そして、あれから7ヶ月の今。
まさかこれほど嵌るとは予想もしていなかったです。
ヘドウィグも大好きだけど、やはり着物姿♪
だって日本人ですもの!
坂崎磐音の清廉さ、居住まいの美しさには完敗です。

放送が始まってからの三ヶ月間はあっという間。
短かったですねぇ。
でも、幸せな時間でした。
ドラマ「陽炎の辻」に関わられた全ての方々とキャストのみなさんに。
そして佐伯先生と山本耕史くんにありがとうと言いたいです。



さて、最終回を見て感じたことを自分なりに整理してみようと思います。

11話「いつの日か」見所がいっぱいありました。

まずは吉右衛門さんの涙。
拳で膝を叩く姿がなんともいえず一緒に泣いてしまいました。
お艶さんは幸せだなぁ。こんなに大切に思われて。
江戸に向かう磐音とおこんを見送る二人の寄り添う姿もとっても良かったですね。
夫婦っていいなぁと思いました。

「お艶さんを背負っての大山参り」
吉右衛門さんの「ありがとうございます!」にほろり。

「おこんちゃんをそっとそっと抱きしめる磐音」
磐音の優しさに言葉にならないくらい。

おこんちゃんの「坂崎さんっていいなぁ」にはガツン!とやられた感じ。
あんなに素直に言われると、おもわず「うん、ほんとに」とテレビの前で答えてしまう。

「滝に打たれて瞑想する磐音」
やっぱり水が似合う!
映像に被さるような磐音の静かな声と白く鍛えた身体がなんだか厳かでさえあり。

そして「闇夜の山中を白装束で駆け抜ける天狗のような磐音」
あのドラマティックなBGM!
ナレーションもいいですね。
大好きなシーン。

雨中の乱戦。頭上からのアングル素晴らしかった!
雨のしずくと一緒になって自分の視線が吸い込まれていくような錯覚を覚えました。
撮影したスタッフさん、大変だったでしょうね。


そういえば、原作の6巻までを読んで強く興味が沸いたのは、ドラマ化でどのエピソードを最終回に持ってくるか?ということでした。
奈緒と磐音の別れとなる「白鶴吉原乗込み」だろうと私はその時思ったのですけど、実際には吉原乗込みは10話。
でも今は納得しています。
運命に翻弄され、悲恋に傷付いて尚お艶のため人のために尽くす磐音。
この人の生き方は、お艶さんが言う道端の名も無い花や風や川の流れと似ているようで…
控えめで優しくしなやかで、時に厳しく強い。

田園風景の目に染みるような緑。
百合が乱れ咲く土手の道。
さまざまな自然の描写も、この「陽炎の辻」という作品には欠かせないもの。
自然の事物はすべてのものへの慈愛を表わしているようで。
そして無償の想いを体現する磐音の回りに人々が集まっていく。

現代にも通じる普遍的なものがこのドラマの根底には流れているような気がします。
それはやはり佐伯先生のあたたかいまなざしから来るものなのではないでしょうか。

浪人とはいえ侍が主役の時代劇。
激しい殺陣。
人が斬られ、命を落とすシーンもあるというのに、 ドラマを見終わった後のしんみりとした気持ちやほっこりとあったかい気持ちはいったいなんなのだろう。
磐音自身が悩み、恐れ、止むに止まれず斬らねばならないと、その痛みを背負っていく覚悟が見えるからなんでしょうか。

最終回も、けしてハッピーエンドなわけじゃない。
別れを近い未来に予感させるものではあっても、前を向いて歩いていく、そんな勇気をもらえたラストでした。
運命のまま、それでも懸命に人は生きる。


そして、おこんちゃんと磐音の物語は始まったばかりです。
おこんちゃんの告白を、そうとわかっていながらあえて聞こうとしなかった磐音。
その胸によぎるものはなんなのか。

これから第二章が始まります!って言ってもおかしくない終わり方でしたね♪♪
私は続編があると信じています。
でもスケジュールの調整など色々と都合があるでしょうから焦らず待ちますよ!

そしていつの日か、また会えることを願っています。
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by aquadrops | 2007-10-15 15:35 | TV

THE LAST FIVE YEARS 岡山公演

夕暮れ時が近付いています。
お城を遠くから眺めてみると、ライトアップされていました。
昼間とは違った趣です。
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さて、『THE LAST FIVE YEARS』岡山公演の開演時間は6時半。
余裕を持って6時には着くように市民会館に向かいました。
会館前は女の子たちがいっぱい。

パンフレットは大阪でゲットしているので、ロゴ入りの赤黒のキーホルダーと井手さんのCDを買い、早速席につきました。

私の席は3列目。やや左側。
右隣にどういうわけかサラリーマン風の男性がお一人。
落ち着かなげに座ってらっしゃるのが気になります。

二階席はほとんど人がいませんでした。
勿体無~い 土曜日なら、娘と来れたのに…
木曜日の夕方じゃ、仕方がないですね。


耕史くんは最初の2曲、ちょっと高音が出し辛そうでしたけど、徐々に情感豊かな歌声になり、最後の3曲は圧倒的でした。

表情、声、仕草。
どれをとってもジェイミーの心が溢れ出すようで、瞬きするのも惜しいほど、1曲1曲が終わるのが淋しくてたまらない。


初演では、最初の喜びに満ちた2曲がとても印象的だったんですが、今回の再演では、特に「IF I DIDN’T BELIEVE IN YOU」と「NOBODY NEEDS TO KNOW」がずっとずっと耳に残りました。

舞台前方、床に腰を下ろし足を抱えるようにして蹲るように座り込むジェイミー。
体格のいい耕史くんなのに、小さく見えるのが不思議です。

キャシーと気持ちがすれ違ったまま、とうとう他の女性と一夜を共にしてしまったジェイミーの慟哭。
熱は去り、怒りはいつしか諦めと冷たく凍った心へと。
でも求めずにはいられないとジェイミーは心の内を吐露します。

この曲の最後の歌詞。
「そして僕には必要 誰かと恋すること 愛する誰か 例えば 君」

この『君』についてのこと。
『君』とはキャシーなのか、それとも浮気相手の女性なのか。
観た人に聞くとそれぞれ感じることが違っていて面白いです。

いろいろ考えて、今はこの『君』は、「浮気相手を通してキャシーを見ている」のだという友達の意見が、一番私の中でしっくりきています。
別れを決意したけれど、ジェイミーはまだキャシーを想っているのだと私は感じるんですね。
みなさんはどう思われたでしょうか?


井手さんのキャシーについて。
驚くほどチャーミングで温かみのある、魅力的なキャシーでした(*^_^*)
やはり歌は素晴らしいし、声が甘さと力強さの両方を秘めていると思いました。
箒を持った時の仕草がなんだか楽しくて可愛くて好き。
それに、オーディションを受けるキャシーの曲もとっても楽しくてちょぴり切なくて、なんともいえない可愛らしさがありました。

そしてラストの曲。
ここでのキャシーは出会いの喜びに弾けんばかりのはずなんですが、ちょっぴり悲しげに見えてしまいました。
私がジェイミーの哀しみに引きずられてしまったのかなぁ…



カーテンコールは2回。
大阪のようにみんな一気に立ち上がってオールスタンディングとまではいかなかったですけど、私も立ちましたよ~!
だって最後のL5Yですもん(^^)v

耕史くんは2回目の時少し話をしてくれました。
「今日で、飛行機とかに乗って移動する公演は終わりです。
岡山いいところですよね~ 
町が好きなんです。
昼間○○○というラーメン屋さんに行ったんですよ。」
などと言っていました。

他にも何か言ってたと思うんだけど忘れちゃいました~☆


そうそう、席と席の間が狭かったので隣の男性はとても窮屈そうでしたね。
途中で帰っちゃうんじゃないかとちょぴり心配だったんですけど、ちゃんと最後まで観劇していかれました!良かった(^_^;)
カーテンコールの1回目まではおられましたしね。
「スマイル」のところで私が笑ったのと、カーテンコールで立ち上がったのにびっくりされてて可笑しかったです。


ひとつだけこの公演で残念だったことがあります。
それは舞台が始まって2曲目に席に着いた人がいたこと。
しかも私の斜め前の席でした。
興醒めしますねぇ~
歌っていたのは耕史くん、舞台上からでもさぞかしよく見えたことでしょうね。
いつも見かける耕史くんのファンの方。
随分早くに会館前にいらっしゃいましたけど、ファンならまず第一に、耕史くん自身に嫌な思いをさせないようにして頂きたいものです。



私のL5Y観劇はこれで終わり。
ゆっくり余韻に浸っていたいけれど、次の日も仕事なので帰路へと急ぎます。

市電に乗って岡山駅前へ。

9時過ぎの電車に乗ってまた2時間揺られつつ、兵庫県に帰り着きました。
私の住む町は雨。
それもどしゃ降りの大雨だったそうです。
駅に着いた時はもう上がってましたけど、地面がかなり濡れていて肌寒かったです。

楽しかったなぁ~
次はどこへ行こう?

耕史くんのおかげで今まで知らなかった楽しみを見付けた私です。
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by aquadrops | 2007-10-11 14:05 | Stage

岡山へ行ってきました♪

10月4日、木曜日。
いいお天気です。
おにぎりを二つ持っていざ岡山へ! ガタンゴトン…ガタンゴトン…
電車代を少々ケチり、新幹線も特急も使わない普通電車のプチ旅。

車窓からの眺めはなかなかローカルで楽しく、2時間なんてあっという間です。
ちょっぴり恥ずかしかったけど、何しろあまり人が乗ってないのでこっそりと食べたおにぎりの美味しいこと。

知らない街を歩いてみた~い♪どこか遠くへ行きた~い♪
と懐かしいフレーズが頭の中に流れてます。


岡山へは、山本耕史くんの舞台「THE LAST FIVE YEARS」を観るため、今回はひとり。
超方向音痴ゆえ、ネットで地図をプリントして持参しています。

え?なんでわざわざ岡山まで行くのかって!?
だってね、大阪2公演だけでは物足りない!!んです。
この二人だけのミュージカルが好きだから(●^o^●)
それに地方の公演はアットホームな雰囲気があったりして、なかなかいいものなんです。

この夏は仕事だけして過ぎて行ってしまいましたしねぇ(^_^;)
秋は私の生まれた季節。 これからちょっと活動したいな。


さて、駅に着くとお土産屋さんをひやかしてから早速ミュージカルが上演される岡山市民会館へ行ってみました。
駅前で15分近くうろうろ…
たしか市電があったはず。
見付けました~! なんか可愛い。
市電って好きなんですよね。
100円で「城下」まで。
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あとは道路の標識を横目に見つつ無事市民会館に到着~!
なにやら耕史くんファンと思しき方々が…妙に気恥ずかしいのでとっとと退散する私。


市民会館から少し離れた所に岡山城がありました。
川沿いの道を歩いていくと、お城の姿が遠くに臨めます。
橋が架かっていて、趣のある道。
静かでいいところです。散歩してる方もいらっしゃいました。
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どんどん歩いて近付きます。
すぐそばまで行ってみました。
姫路城を見慣れている私にとっては、岡山城は黒い壁が男性的な印象。
お城の近くの地面には炊事場や控え室の場所などが記されています。
ここに人々の暮らしが本当にあったんだなとなんだか感慨深いものがありました。
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お城の中へも入れたのですけど、今回は美術館に行きたかったので断念。
急いで美術館に向かいましたが…
ああいうところは閉館するのが早いんでした(>_<)
入っても30分くらいしか居られないのでがっかり。
後楽園も見たかったのですけど、こちらも時間的にゆっくり出来そうにないので次回の楽しみにおいておく事にしました。

川沿いの反対側の道を歩いてちょっぴり迷いつつ、あてにならない勘を頼りに歩くこと30分。
なんとか城下辺りに到着してホッ
岡山シンフォニーホールというビル1階の「茶倉」という小さなCAFEへ。
ここは和のテイスト溢れるお店で私の大好きな雰囲気。
「アボガドとサーモンの丼」をオーダーしました。
サーモンの辛さとアボガドの青味とのりとモヤシがいい感じ。
美味しかったです。
調子にのって、生クリームと餡ののったアイスコーヒーも頼んでしまった甘党の私…
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食べ終わったあと、同じビルの地下にある本屋さんへ。
なんと!NHK木曜時代劇のポスターを発見☆
田舎では貼ってないので、初めて見ました。
辺りを気にしつつ、急いで写メに撮りました~♪
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つづく。
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by aquadrops | 2007-10-11 13:35 | Monologue

すべて終わりました

窓から朝の日差しが差し込んでいる。
宮戸川、鰻割きの仕事場。

正月飾りの前できりりと襷を掛け、鰻の成仏を願う磐音は仕事始めだ。

早速顔を出した幸吉に一年の願いを聞かれ、よぎる面影がある。
笑顔で答えた言葉は別のこと。
「息災に過ごせれば…それだけでいい」

相変わらず調子のいい松吉に鉄五郎親方の清めの塩つぶてが飛び。
品川柳次郎がやってきて、年越しの非礼を詫びる。
大人びた幸吉の講釈は何を知らずとも的を射て。
磐音を取り巻く人々の笑顔はいつもと変わらない。



金兵衛長屋では、男たちが大声で騒ぎ妙に浮き立っている。
正月松の内の七日、吉原に新しく入る花魁がお披露目に通りを練り歩くのだという。
滅多にない華々しい出来事。
誰もが興味をそそられ噂しあっている。

だが、その花魁が磐音の許婚だったことを知る者は少ない。
大家の金兵衛と柳次郎だけが、その胸中を察してくれているのだった。



陽炎の辻~居眠り磐音 江戸双紙~

第10話 『とわの契り』




中居半蔵から呼び出しを受けた磐音は二人で酒を酌み交わし、藩騒動後の関前の状況を知らされていた。
父坂崎正睦が宍戸文六の失脚により国家老の座につき、困窮している藩の財政再建に着手しているのだが、その道のりは険しく、苦渋は十分に察せられる。

中居が手渡した磐音への父の手紙に書かれていたのは。
関前領内の物産を藩で管理し高値の江戸で販売、利を得たいという事。
(これは磐音と今は亡き琴平、慎之輔ら三人が考えていた策でもある)
藩主の参勤交代費用二千五百両の調達を今津屋に願う事。
この二つを成就するために磐音の力を貸してほしいというものだった。


奈緒を救いたいという思いと関前藩の困難な立て直し。
藩を離れ自由であるはずの磐音の肩には、未だに苦しく重い責務が伸し掛かっていた。




吉原会所の四郎兵衛の呼び出しを受け、正月早々またも雅な里に足を踏み入れた磐音。
待っていたのは、「奈緒を守ってほしい」という切迫した依頼。

奈緒が京から江戸へ来る道中で尾張に立ち寄った際、京の廓の番頭が尾張の遊女屋と江戸の彦屋を天秤にかけたという。
尾張の楊貴楼の番頭たちは、用心棒を引き連れ、この江戸まで奈緒を奪い返そうと追って来ているらしい。
それが叶わなければ、奈緒の身に危害を加えると卑怯な脅しまでかけてきていた。

黙って頷く磐音。
奈緒を過酷な運命から救いたい、しかしその願いを叶える術はなく…
こうなれば、奈緒の身を守るしか磐音に残された道はない。


重い心を抱えたまま今津屋を訪れた磐音は、吉右衛門と由蔵を前に両手を突いて願っていた。
関前藩の危機を救うため、藩主の参勤交代費用二千五百両の用立てと、藩の物産を売り捌くための力添えを。

一方、吉右衛門、由蔵そしておこんも、「金子を用立ててほしい」という磐音の願いを奈緒のためだと思っていた。
だが磐音はきっぱりと言う。
「奈緒のことは私事でござる」
「此度の金子が調達出来るかどうかは、殿のみならず、豊後関前の家臣、領民らにまつわる大勢の暮らしが掛かっております。その者たちを路頭に迷わせるわけには参らぬのです」

浪々の身でありながら、奈緒のためではなく藩の為なら頭を下げられるという磐音は、どこまでも武士だった。
そっと席を外すおこん。
磐音の胸中を思えば思うほど、聞いているのが辛いのかもしれない。

「今津屋どのにとってはご迷惑な話ばかり、そうと分かっていながらこの坂崎磐音、恥を忍んで参りました」



関前藩の立て直し策の全てを書付けで示すこと。
二千五百両の質草。
まずはその二つを今津屋に見せなければ、申し出は叶えられない。
磐音からそう告げられた中居は、武士として恥を晒すことへ困惑を隠せない。
だが、磐音は言う。
「武士は商人に縋るしか暮らしを立てられぬのです。それが江戸です」



長屋から出て行く中居半蔵を見送るのは、すっかり意気消沈した風情の長屋の住人たちだ。
どういうわけか、誰もが目に涙を溜めている。
奈緒のことを大家から聞いたのだ。
心配をかけて申し訳ないと謝る磐音へ、磯次は自分のことのように涙にくれ叫ぶ。
「頭なんか下げんじゃねぇよ!一番悲しいのはあんただろ!」

微笑む磐音。
重く苦しい胸に染み入るのは身近な人の温かい心。
「大家どの、この長屋に住み暮らしたそれがしは幸せ者です」




夜半、時雨不動にやって来た磐音と四郎兵衛たちは、尾張の楊貴楼の者たちに正面から説得を試みるが聞き入れられるはずはない。
磐音は尾張の用心棒伊勢崎図書之助との一騎打ちによる決着を望む。

「直心影流、坂崎磐音でござる」
「伊勢崎図書之助、流派は忘れ申した」

蒼い月明かり。
対峙する二人の剣客。
静かな湖面を思わせる、静の磐音。
伊勢崎の構えはどこから来るかわからない型破りな動と見える。

鞘を投げつけ一気に勝負をかけてくる伊勢崎。
矢を投げ、両手を使う、激しい剣風。
疾風のようなその攻撃をすんでのところで躱す磐音。
だがやはり澄み切った磐音の剣に適うはずもなく峰打ちで勝負は決する。

磐音の剣の腕に尻込みする尾張の者たちは捨て台詞を残して逃げ去って行く。

四郎兵衛に促され、帰ろうと歩き出した磐音の足元。
白い折鶴がひとつ。
こんな寂れた不動の一角にどこから飛んできたものか。
そっと持ち帰る磐音は白い折り鶴に奈緒を見ていた。


「白鶴~はっかく~」
それは奈緒が吉原で名乗る花魁としての名。
そして遠い地の生まれ故郷の城の名でもある。

長屋にひとり。
灯りも点さず…
そっと手にした折り鶴をいつまでも見つめる磐音を、月が影絵のように静かに映し出していた。




読売が舞う、大通り。
彦屋の主人を先頭に、大勢の者たちを従えた奈緒の、白鶴の行列は吉原を目指して賑やかに街を練り歩いてゆく。

傘が差し掛けられ、紅い扇を手に輿の上で微笑む白い顔。
凛としたその面差し。
見詰めるおこんに向けられたあでやかな微笑み。


磐音は…
人々から少し離れた軒下の影からひそやかに白鶴を見守っていた。
菅笠の下から見るその人は、もはや磐音の知る奈緒ではなく。
衆人の好奇と羨望の眼差しを白い面に受け止め艶然と微笑む。
江戸の吉原が誇る遊女。

見詰める磐音に気付くはずもない。


その時、観衆を押し退けて尾張の者たちが現れた。
白鶴の吉原乗込みを邪魔し、傷付けることも厭わない「血の雨を降らせる」とまで言った者どもだ。

磐音は走る!
白鶴を守るため。
その吉原乗込みを守るため。


それは一陣の風のような一撃。
狼藉者たちはあっという間に道に転がされ、得たりと声を張り上げる彦屋の主人によって白鶴乗込みの「出し物」にされていた。


振り返った磐音の目と白鶴の目が合う。

あの夜分かたれた二人の運命が、これほどまでにすれ違うと誰が想像しただろう。

時が止まればいいと思ったのだろうか。
二人は何を思ったのだろう。
磐音の目はひたと奈緒の顔に向けられ動かず。

驚きに目を瞠っていた、その懐かしげに細められる瞳。
揺れる胸の内を表わしてうつむく白鶴。
だが、やがておもてを上げ花魁として吉原に向かう白鶴は一度として振り向くことはなく。


通り過ぎる行列を横目に、磐音は目を伏せひとつふたつまばたきをして。
白鶴を目で追う人々の中、ひとり背を向けゆっくりと歩き出す…



雪が降る。
傘を手におこんは待っている。

橋の向こうから歩いてくる磐音はいつもと変わらない。
おこんは黙ってそばに走り寄り傘を差し掛けていた。

「すべて終わりました」
「はい」

磐音の静かな目の中にあるもの…
おこんは知っている。
そして、微笑んでみせるのだ。




関前藩の参勤交代にかかる費用二千五百両を今津屋は用立ててくれることになった。
質草として今津屋吉右衛門が望んだもの。
それは坂崎磐音その人だという。
借財を返せない場合は今津屋で磐音を貰い受けるということだ。

関前藩主福坂実高はその申し出に目を白黒させるものの、断るわけにもいかず、納得がいかないまま。
しかし金子はどうしても必要なのだ。
だがこれで、関前藩の未来にかすかな光が灯った。



時雨不動で拾った折鶴を磐音は川にそっと流していた。
夕暮れの陽を受け煌く水面。
白い鶴はゆっくりと流れ下っていく。





10話。
知っていたこと、分かっていたことだけど…
辛すぎる展開でした。

文字で読むより映像で見ると余計に切ないこともあるんですね。
それもこれも山本磐音のあの眼差しのせいです。

なんていう目。
あの目には磐音の心が確かに宿っているとそう感じました。

悔しさ。
奈緒を置いてきたことへの後悔。
理不尽な運命をどうすることも出来ない苦しみ。
救えない自分への怒り。
奈緒への、何故だという憤りもあったのでしょうか。

全ての想いを瞼に隠して、磐音は背を向ける。
その背が言葉にならない心を表わしているように見えました。
虚ろで、哀しい後姿でした。

涙目のおこんちゃん同様、見ていられなかったです。



でも、磐音には黙ってそばにいてくれる人がいました。

辛い胸の内を知っていてくれる誰かがいるだけで、人とは慰められるもの。
そこには言葉なんて要らないんですね。





さて、来週はとうとう最終回。
早いです!!

こんなにいいドラマが終わるなんてもったいない。
キャスト、演技、そして、細部に渡るスタッフさんの細やかな努力にも頭が下がる思いです。
NHKさんに是非とも続編を作って頂きたいです。

そういえば、DVDの発売が決定しましたね♪
まぁ、私に言わせれば当然かな、なんて(^_^;)
贅沢を言わせて貰えれば、特典に未放送の映像などなど付けて頂ければとっても嬉しいところです。


来週は私の大好きなエピソード。
大山詣です。
白衣で険しい山道を駆け抜ける磐音さま。
滝に打たれる磐音さま。
闇夜の山中で刺客と繰り広げる闘い。
そして、お艶さんを背負って登る大山への道。
予告では、頭上からの斬新なアングルもありましたね!
「陽炎の辻」は美しい映像がたくさん。

心に残る素晴らしい最終回を楽しみに待っています。
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by aquadrops | 2007-10-08 16:34 | TV

この世の中 どこでどう生きようと苦界でございます

人々は寒風に肩を竦めて忙しげに町を行き交う。
師走の江戸。
町はどことなく落ち着かない風情が漂っている。


金兵衛長屋では、大家のかけ取りと長屋中の大掃除の真っ最中。
襷がけの住人たちが総出でわいわいとにぎやかだ。

幸吉とおそめが無人の部屋を覗き込んでいるのへ、「帰ってこねぇよ!」とぶっきらぼうに言う磯次。
磐音が江戸を発ってから季節は巡り、新しい年を迎えようとしている。
暗い戸口をぼんやりと見つめる目。
口では何を言おうとも、だれもがその部屋の主の帰りを待っているのだ。



陽炎の辻~居眠り磐音 江戸双紙~

第九話 『夢まぼろし』




両国橋上で手を合わせるおこん。
その後ろを菅笠を被った浪人が通り掛かった時、橋を乱暴に大八車が走り抜けようとした。

「平気でござるか」
おこんを庇ったのは…たった今無事を祈っていた人物、磐音だ。

「ただいま戻りました、おこんさん」
どこかで見た光景…

青い空の下、微笑むおこんの笑顔が眩しい。



今津屋の店先で早速押し込みを叩きのめした磐音は奥座敷にいる。
心配してくれていた人々に今までの報告をするためだ。



関前を出て、身売りした奈緒を探し旅に出た磐音は、長崎、小倉、京、金沢と都を転々と追い続け、この江戸へ戻ってきていた。
半年もの旅の間、一度も会う事が出来ずすれ違った末、口伝に奈緒が江戸に売られたと聞いたためだった。

関前を出た時百両だった奈緒の値は、江戸に辿り着いた時点で千両に跳ね上っていた。
江戸の遊郭、吉原。
それは、厳しいしきたりに守られた廓だ。



静かな朝の刻限、友の位牌に手を合わせる磐音。
その手にはひとさしの扇がある。

奈緒が自ら書いたという絵と詩。
「風に問ふ わが夫はいずこ 実南天」
淋しげに佇む奈緒が扇の中にいた。
磐音は奈緒を救ってみせると友に誓う。


そこへやってきたのは金兵衛と長屋の住人たち。
「帰ってきたのかい?」
幸吉とおそめの弾ける笑顔。
それは辛い旅に疲れた心に染み入るなによりのもの。

磐音には帰ってくる居場所がここにある。


翌日、鰻割きの仕事に出、南町奉行所与力の歓迎を地蔵湯で受ける。
笹塚の顔出しには磐音に対する仕事の依頼もあった。
「それがし、南町の同心ではございませんぞ」
苦笑する磐音に笹塚は取引を持ちかける。

笹塚の話によると、江戸に二月前から多額の金子を強奪する押し込みが現れているという。
情け容赦のない遣り口で、あっという間に仕事を終えるらしい。
居合いを使う若い男。
風に乗っていい匂いがしたとの妙な話もある。

磐音は、奈緒の吉原での消息と引き換えに町奉行所の仕事を引き受けることになった。


吉原は町奉行所の管轄下に置かれているらしい。
その吉原の全てを支配しているのが「吉原会所」
会所の長、四郎兵衛に磐音は奈緒の消息を尋ねる。

会所にはまだ奈緒の話は伝わっていなかったが、四郎兵衛は協力を約束してくれた。
頭を下げる磐音に、ひとつだけ聞かせてくれと四郎兵衛は言う。
奈緒を見付けたのち、どうしたいのだと。

「なんとしても金子を作り、奈緒を救いたいと思うております」
「千両の金子を?」
「……はい」

途方もない大金と奈緒を救いたいという願い。
どちらも、今の磐音に叶えられるかどうかわからないもの。
しかし、望まなければ現実は何も変わらないのだ。




小雨の中、由蔵の供をして出掛けた道。
ふと違和感を感じた磐音は立ち止まる。

すぐ近くで騒ぎも起きているようだ。
駆けつけた大店で押し込みの直後と思われる現場を目の当たりにする二人。

そして蘇る記憶。
たった今、雨垂れの中すれ違った異質な気配。
殺伐とした気と、血の匂いだ。



四郎兵衛から奈緒の消息を聞かされた磐音は喜びを隠せない。
しかし江戸で奈緒に支払われた金子はなんと千二百両もの大金だった。

四郎兵衛は言う。
「あなたのお役に立ちたいのですが、年寄りの役目はここまでが精一杯」
「かたじけない」
磐音はただ頭を下げるしかない。




磐音が見た川﨑屋の押し込みを含め、今までに奪われたのは六百両もの大金だった。
探索の結果、吉原の香実楼、秋葉太夫の元に通っている浪人の風体が押し込みと似ていると知れる。
一匹狼の押し込みは、香実楼の秋葉の元へ通う為に非道な行いを繰り返しているようだ。
「この里では、どんな金でも黄金色なら通用いたします」と言い切る秋葉太夫。
けれど、その黄金は血の色に染まり、殺された者たちの恨みをのんで輝いている。



今津屋の一室では柳次郎とおこんが磐音に詰め寄っていた。
奈緒の身請けの額が跳ね上がったことへの驚きと、一見平静を保っている磐音が、お披露目の日を目前に控えている奈緒を助けるため行動を起こそうとしない事をなじる二人。

「どうして手に手を取って逃げないの?」
「無理を言わないでください」

奈緒には千二百両もの大金が支払われている。
吉原。
それは、甘く煌びやかな表の顔と厳しく残酷でそこへ入り込んだ者の魂を縛る裏の顔を持つ里。一度足を踏み入れた遊女に自由は許されない。

早くなんとかしなければ、もう手の届かない所へ奈緒は行ってしまうのだ。
普段は明るく朗らかな柳次郎が拳を握り締め、怒りをあらわにしたのも無理はなかった。
「品川さんを怒らせてしまいました」
哀しげに口元だけで微笑む磐音の本当の思い。
それ以上何も言えず目に涙を溜めているおこんにも、そして柳次郎にも、磐音の辛さはきっとわかっているのだろう。



赤い提灯。三味線の音。
白粉の匂い。

女たちの嬌声とそぞろ歩く男たち。
吉原の夜はまだまだこれから活気付いてゆくのだろう。

そこへ連日通う磐音の目にはいつまでも馴染まないものばかりだ。
追い求めてきた奈緒の面影とも重なることはない。

ここで奈緒が暮らす…
磐音にとって耐え難い現実。

生き抜くために苦しい日常を一時忘れたい人々が行き交う里。
女たちは華を夢を売り、嘘と知りながらそれに酔う男たちがいる。
「刹那の楽しみは全て夢まぼろしなのでございますがね」

四郎兵衛の言葉に奈緒を思い答える磐音。
「しかし女たちにとってここはやはり苦界」

「この世の中、どこでどう生きようと苦界でございます。 おわかりでしょう」

喧騒に紛れひとり立ちつくす磐音。
天を仰ぎ目を閉じる。
降りかかる氷雨に洗い流してもらいたかったもの…




三日後、小雪がちらつく吉原の里。
磐音は押し込み田野倉源八を香実楼で待ち受けている。

必ず来るとの約束を守り姿を現した田野倉は、待ち受けていた会所の者たちに囲まれた挙句面番所の同心を斬り、通い詰めたはずの秋葉太夫を人質にとって狂気の目を磐音に向けてくる。
幾人もの命を金の為に奪った居合いの名手は、もう既に剣に生きる者の矜持を見失っているのか。

降りしきる雪が風に舞う。
腰を沈め、勝負の間合いを一気に詰めた居合いと居眠り剣法が真っ向からぶつかり合う!

天が選んだのは…磐音。
罪なき者の血糊に曇った刀では真実は見えないのかもしれない。



江戸の町を騒がすひとつの事件は終わった。

磐音は吉原会所の四郎兵衛から用心棒代として礼金を受け取る。
師走だというのに米味噌の払いも滞っているという磐音の浮世離れした長閑さ。
「可笑しなお侍ですな、あなたは」
楽しげに笑う四郎兵衛の目は磐音をあたたかく見つめている。



もう一人磐音のことを心から思ってくれる人物が両替商にはいる。
今津屋の吉右衛門が奈緒の身請け金を都合してくれると申し出てきた。
だが、磐音には借りても返すあてなどないのだ。



吉原、彦屋の一室。
磐音がくれた簪を見つめる奈緒が鏡の前でひとり。

磐音もひとり。
心を静めるように目を閉じ縁側に座している。


もうじき夜が明ける。





さて、9話「夢まぼろし」 です。

吉原のくすんだような艶やかな通り。
偽りの華やかさ。
でも、生きるため遊女は必死で美しさを競うんですね。


雨を受けながら立つ磐音の姿は一枚の絵のようでした。
「水も滴るいい男」とよく言いますけど、山本磐音には雨も雪も似合いますね。

そして耕史くんの殺陣に益々磨きがかかってきたように思います。
磐音の居眠り剣法は今まで見てきた殺陣とは全く違う異質な魅力がありますけど、戦い方に説得力のようなものを感じます。
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by aquadrops | 2007-10-08 16:28 | TV

勝ち戦の船に乗り換えただけでござる

中空を舞う鳶の澄んだ声が聞こえる。
豊後関前、白鶴城を遠く眼下に見おろす峠の一本道。

坂崎磐音はとうとう目指す故郷の地に帰ってきた。

一年前、親友河出慎之輔、小林琴平とともに藩政改革の志を胸に江戸勤番から戻り希望に満ちて臨んだ、同じ景色。

今、藩の内部は乱れ中老である父の命さえ危機に晒されている。
江戸から東海道を経て陸路を走破してきた磐音の顔には旅塵がこびり付き急ぎ旅を思わせたが、逸る心に突き動かされ、その足は留まることを知らないようだ。
「琴平、慎之輔、帰ってきたぞ」
「おぬしらの無念、必ず晴らしてみせる」


陽炎の辻~居眠り磐音 江戸双紙~
第八話 『対決の晩夏』




菅笠を深く被り早足の磐音が潜ったのは静謐な趣を漂わす寺の門。
母、坂崎照埜の菩提寺だ。

門前で箒を手にしていた和尚とにこやかに挨拶を交わす磐音。

「相も変わらぬ磐音殿であるなぁ、食う時は一心不乱。それでよい」
空腹とともに急ぎ旅の疲れを癒してくれるような和尚の穏やかな笑顔。
顔なじみの願龍和尚は、磐音の立場や坂崎家の現在置かれている苦境を察し、案じていてくれたのだろうか。


夕陽が障子を金色に染め抜き、静まり返った部屋に降り注いでいる。
ひとり、寺の一室で刀を抱え瞑想する磐音の元へ、直目付の中居半蔵がやって来た。

磐音の帰国を喜ぶ中居から、暗殺の手が磐音の父の友人にまで及んだ事が知らされ、中居の帰国も国家老の疑念を呼び、直々に詰問を受けたという。

中居半蔵は、一年前の磐音ら三人の刃傷沙汰をもう一度調べよとの主の命を国家老に告げていた。
藩主の命である以上、国家老といえども逆らうことは出来ない。
腹に一物抱える身であれば必ず動きを見せるだろうと、大胆にも正面切って脅しをかけたのだ。
藩の要職にある者達の動きを監視する直目付だからこそ出来ることなのだろう。

宍戸文六は、磐音の父坂崎正睦が西国屋次太夫から賄賂を受け取っていたという、とんでもない濡れ衣まで着せるつもりのようだ。
静かな怒りを秘め唇を歪める中居に対して磐音は言う。
「ご家老は父が怖いのです。隠された借財が明るみになり父の戒めを受けるのを怖れておいでなのでしょう」

しかし、常に冷静な磐音の心を打ち砕く事実。
許婚奈緒の近況だ。
「関前を出られた」
「遊女に身売りされたようだ」と。

驚きの余り言葉を失う磐音に、半蔵は非情な命令を下す。
「坂崎、心して聞け。不正の証拠を手に入れ、宍戸文六を一気に追い込む。それまでは酷なようだが奈緒殿のことは忘れよ」


夜半の竹林。
一人なんども剣を抜き打つ侍がいる。
慟哭する心をも切り捨てるかのような切っ先。

奈緒を忘れることなど出来ない。
藩の危機を見捨てることも出来ない。

夜の空気を切り裂いて一心に刀を振るう磐音の上には、ただ月明かりと夏枯れの笹の葉が静かに降り注いでいるばかりだ。



撫子の花が雨に打たれながら健気に天を向いている。
江戸は雨、今津屋の縁側にはぼんやりと空を見詰めるおこんがいた。
心ここにあらずのその姿を見かねて、お艶は雨上がりの里帰りを勧めてくれる。

金兵衛長屋では晴れ間を待ち兼ねたような住人たちが、井戸端に集まり賑やかだ。
留守宅に風を入れていたおこんは、磐音の着流しをそっと手に取り見詰めている。
深川小町の目に浮かぶのは…遠く離れた地にいる想い人の姿なのだろうか。




西国屋を関前藩士別府伝之丈とともに見張る磐音。
通いの番頭が一軒の町屋に消えた。

後をつけた二人は西国屋の主、次太夫の存在を確信する。

まだ真剣で戦ったことがないと言う若い伝之丈。
「こわいか」
「こわいです」
「それでよい」
「勝負に臨む者全てが胸に恐れと不安を抱いておる」

二人だけで踏み込んだ磐音たちは、宍戸派が雇った用心棒を叩きのめし西国屋次太夫を捕らえることが出来た。

宍戸文六は改革派の動きを知り、西国屋を由布院に逃がそうとしていた。
間一髪。
磐音たちの動きに国家老は明日にも坂崎正睦を城に呼び出して強引に切腹させる心積もりのようだ。
事は急を要していた。



坂崎家では明日の登城を前に遺言状を認めている正睦のところへやってきた者がいる。
「磐音でございます」
「入れ」

一年ぶりの父子の対面。
静かに座した父の前に両手をつき、磐音はこれまでの仔細を語った。

関前藩には一万六千五百両の隠された借財があること。
江戸家老の名で金を借りたのは宍戸派の原伊右衛門であること。
上野伊織が不正の証拠を掴もうとして命を奪われたこと。
この度、中居半蔵とともに家老一派の不正を正す為戻ったこと。

「そなたはこの坂崎家や関前を見捨てたのではなかったのだな」
父の言葉には息子への様々な思いが滲んでいるようだ。
「お許しください父上」
「何を申す。苦労をかけたのう」

と、襖の向こうですすり泣く声。
母の涙と妹の縋る目に、磐音は父を助け不正を暴くことを約束して懐かしい家を後にする。


裃姿の家老たちが顔を揃えた大書院で中老坂崎正睦の詮議が始まった。
堂々と反論する正睦を力でねじ伏せよるように怒鳴りつける国家老宍戸文六。
その言い草は自分の罪を他人に被せ、権力の名のもとに無法な裁きを下そうとするものだ。

それを遮ったのは静かに目を閉じていた中居半蔵だった。
「笑止千万!」
今津屋から渡された藤屋の証文の写しと添え書きを見せ、厳しく問い質す。

表で争う物音。現れた磐音。
連れて来られたのは西国屋次太夫だ。
「宴席に酒肴を持参致しました。ご賞味くださりませ。」

刃傷沙汰と不正な借財その全てが国家老宍戸文六の指示であったこと。
西国屋次太夫は居並ぶ藩の家老たちに向かってはっきりと告げたのだった。



「静まれ!」
「下がりおろう!上意である!」
見苦しくも中居や磐音たちを「狼藉者」として反逆に転じようとした宍戸文六だが、藩主の命の前には膝を屈するしかなかった。

宍戸親子に謹慎が申し付けられた。おって厳しい沙汰が下されるだろう。
これで宍戸派は瓦解し、関前の澱みが取り除かれるに違いない。
藩の命運と父の命を救う事が出来た磐音は、父を輿に乗せゆっくりと家へ向かう。

だが、その前に立ち塞がった者がいる。
宍戸文六の嫡男秀明とその用心棒だ。

照り映える夕陽が辺りを赤く染める辻。
偉丈夫の剣客大堅物と対峙する磐音。

頭一つ分高い位置から振り下ろされる重い刃と力任せの大立ち回りに振り回され苦戦するものの一瞬の隙を突き討ち果たす。


父の労わる声に磐音の険しい顔がほんの少しやわらぐのだった。



「関前から遠い地に参ること」
それが遊女として売られていく奈緒がただ一つ望んだことだった。

「身は遠く見知らぬ地にあろうとも心はひとつにございます」
哀しい言葉が最後の手紙には記されていた。


江戸、磐音と出会った両国橋で手を合わせ祈るおこん。


一方磐音は奈緒を追って旅に出る。




八話、やっと関前の陰謀にカタがつきました!!
宍戸さまの悪っぷり、素晴らしかったですねぇ☆☆
「さいごくや~!」とか「狼藉者じゃ出あえいっ!!」とか♪
これぞ悪役!!という感じで良かったです。

そして殺陣師の竹田先生登場です!
流石、いつもの殺陣よりかなりスピードがあるしスレスレの所を刀が通っています。
ちょっと棒読みの台詞もご愛嬌。
目がクリクリでかわいいですよ~

お寺で刀を抱え一人瞑想する磐音が人の気配にさっと刀を構えるところ、ちょっとスロー再生してみたり(^_^;)

大堅物を倒して「お見事!」なんて言ってる抜け作を「たわけ!」と叱り飛ばす磐音さまもGOODでした!

しかし一番私の目に焼きついたのは、奈緒の事を中居様から知らされた時の磐音の表情です。
目を見張り、ゆれる眼差し、伏せる視線。
慟哭を飲み込むように喉が何度も動いていました。
叫びたい心を必死で押さえつけているようでしたね。


第九話は久しぶりに着流し姿に戻りましたが、奈緒さまを追い諸国を旅するエピソードはあまり描かれずちょっぴり淋しいです。
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by aquadrops | 2007-10-03 17:31 | TV