歌の力

終わってしまいました。
関西では一回きりのヘドウィグ。


終わってすぐの気持ちは…
短すぎる!!
2時間なんてあっという間。
せめてあと2回は観たい。


とりあえず自分に正直に、ラスト近くに感じた事を書きます。
細かいことはまた順番に。





キムタク風ルーサーは、耕史くんのサービス精神なんだろうな。
面白かったし笑ったけど、ルーサーがあまり可笑しいと、話の内容が頭に入ってこなくて、その先が唐突な気がした。


ヘドの涙でもうクライマックスなんだと気付き慌てる私。
「もう?そんな…心の準備が出来てない!」



展開に気持ちがついていけないのはどうしてだ。
リピーターらしき人たちの先走る笑いに妙な違和感を感じてしまう。
これはお約束なのか?
心を真っさらにして観ようと思っていたのに。


ここで気付く。
私は、ヘドウィグのスキャンダルを知って集まっただけのそこいらの聴衆と同じだ。
噂による不確かな知識。
微かな疎外感…


チリチリと燻るフラストレーションを抱えながら。
『HEDWIG'S LAMENT』が始まる。

「I was born on the other side …
             … I end up black and blue」
                        この「black and blue」の部分が何故か好きだ。

「I gave a piece to my mother」
「I gave a piece to my man」
「I gave a piece to the rock star」
「He took the good stuff and ran」

ヘドウィグが胸の前で握った拳。
その腕をゆっくりと伸ばし、手を開くと逃げていくもの…
愛のかけら??

見えるような気がした。



ああ良かったと思った。
私はたぶん間に合った。
置いてけぼりにならずに済んだ。
安堵している内に、激しく象徴的な曲へ。


去年の『EXQUISITE CORPSE』は、赤い光が目に刺さるようで刺激的。
大音量の音の洪水の中、白い身体が真っ赤になるほど頭を振り、激しく飛び跳ねながら歌い。
くるくる回って倒れ込むヘドウィグはただ苦しくて痛々しかった。

でも今年は違っていると感じたのはなぜだろう。
倒れ込む前。
トミーとして起き上がる前。
同じように、赤いライトの中で飛び跳ね頭を振りながら。
網タイツを引きむしって衣装を脱ぎ捨てていくヘドがなんだか美しく見えた。
「この人は今、意思の力で抜け殻を破ろうとしている」
そう感じた。
たとえばそう、蝶や蛾が羽化の時に見せる青白い脆弱さ、そして背中合わせに現れる侵しがたい尊厳のように。


メイクを剥がし、十字架を額に刻んで起き上がった顔が、あまりに無心に見えて…
額に掛かる前髪をかき上げる仕草にただ呆然と見惚れていた。
その後、トミーとしての『WICKED LITTLE TOWN』をあまり覚えていない。

私がはっと気付いた時、ヘドウィグはラストの曲『MIDNIGHT RADIO』を歌い始めていた。


そして私は、歌の力に飲み込まれることの喜びと呼ぶしかないものに、打ちのめされる。

もう、何も要らない。
どんな言葉も必要としない。

この歌が聴けただけでいい。
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by aquadrops | 2008-06-13 11:09 | Stage