「壁」があらわすもの(ネタバレあり)

始まった直後の様子を思い出してみる。
舞台袖から颯爽と現われたイツァークの「レディース&ジェントルメン、ヘドウィグ!!」の声を受け、観客席横から登場したヘドウィグ。
拍手の中、射し込むスポットライトの光が眩しい。
その上から星型のライトが観客席をぐるぐる照らして一気に盛り上がる会場!!
メイクはビックリするほどハデだけど、おもてを上げてまっすぐに前を向き、凛とした表情が綺麗。

舞台に上がるとマントを広げ羽ばたくみたいにひらめかせて歌い出す。
ヘドウィグは、まるで蝶の羽のような壁を纏っているかのような姿。
「TEAR ME DAWN」 → 打ち壊せ!
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今回の舞台でまず衝撃を受けたのはビジュアル。
でも実際に観た後はそれをすっぽり忘れてしまうほどの楽曲の魅力に圧倒されて
頭は真っ白に。

そしてあとからじわじわと響いてくる、何気ない言葉。
ヘドウィグの言葉がふと思い出されて、その時のイメージがフラッシュバックするような感覚が今も続いてる。


「私はベルリンの壁」
開口一番のヘドウィグの言葉です。

まず気になった、この「壁」が表すものって何だろう。
DRAGQUEENとしての性別?
それとも東ドイツ生まれが指す国境や国籍?
資本主義と共産主義、男女、親子、貧富、地位やキャリア。
心や言葉の壁。


高く聳え立つ物質的な構築物や自然界に存在する平らな面を持った形状物も壁と言う言葉で表しますが、「内と外を隔てるもの、外界からの影響を遮断する」という意味から、主に心理的・象徴的に何かを隔てるもの、あるいは行く手を阻む大きな障害の事を壁と言います。 ~Wikipediaから抜粋

「ベルリンの壁」は、この両方の意味を持っています。
東西冷戦の象徴であり、実際に西ベルリンを囲んでいた高い障壁。
そして貧富の差と経済的混乱など崩壊後も様々な軋轢を生んだドイツ分断の象徴。
このベルリンの壁について誤解されやすいのは、壁が隔てていたのは東西ドイツではなく、東ドイツの中の西ベルリンだったということ。
ベルリンは当時の東ドイツの中にあり、そのベルリンが東西に分かれていた、その一方が西ベルリンでした。
その西ベルリンを囲っていた長さ155kmもの構造物を「ベルリンの壁」と言います。

ヘドウィグが性転換手術を受けてまで脱出したかった東ドイツという国、あるいは共産主義社会。
そのための障壁だったベルリンの壁が崩壊し東西ドイツの国境が無くなったのは、ルーサーと離婚してヘドウィグが一人ぼっちでいた時でした。
壁の崩壊をテレビで見たヘドウィグはどんな気持ちだっただろう。

ベルリンの壁崩壊について。
1989年11月9日、東ドイツ政府報道官の早合点により発表されてしまった「旅行許可の規制緩和」という法律は、マスコミによる「旅行自由化」という間違ったオヒレが付いて瞬く間に伝わり、テレビでニュースを見た東西ベルリン市民を壁や国境付近にぞくぞくと駆り立てた。
一方、何も知らされていなかった国境警備隊と後手に回った政府は自体を収拾出来ず、結果としてなし崩し的に、事実上なんの許可も受けていない市民の通過を許してしまい、壁と東西ドイツの国境はその意味を失った。
翌日、未明のうちから集まり始めた大勢の東西両ベルリン市民の手により壁は破壊され、ドイツは急速に統一に向けて走り出す。

「ベルリンの壁」は歴史上こういった背景を持っています。



戦後の混乱の時代。
1961年頃から壁の建設が始まったのですから、ちょうど同じ年に生まれたヘドウィグは冷戦の真っ只中を生きていたことになります。

様々な壁に囲まれ自由を制限され、行く手を阻まれていたのかな。
それでも人を愛し、愛されることを望む「カタワレ」探しを続けながら、自分を捨てていった父親も心の奥に傷を隠しているのだろう母親も愛していたんでしょうね。

アパートが狭いからと、オーブンに顔を突っ込んでラジオを聞く6才のハンセル。
アメリカの憧れの音楽についハミングしてしまうと母親にトマトを投げ付けられます。
しかも親子の接触がアクシデントのみだけなんて、あまりにもヘンですよね。

そんな母親とのエピソードを語るヘドウィグはちょっぴり切なそうだけど優しく柔らかい表情で、親子の壁はもう遠い昔の思い出なのかなと想像しました。
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by aquadrops | 2007-04-05 15:34 | Stage | Comments(2)

Commented by みもざ at 2007-04-07 21:01 x
しずくさんのブログを読んで、またまた思い出しています。
いよいよ明日、ファイナルです(涙)。
舞台は終わってしまっても、
ヘドウィグは心の中で永遠に生き続けます!




Commented by しずく at 2007-04-09 18:48 x
みもざさんコメントありがとう♪
ヘドウィグの言葉、いっぱい素敵なこと言ってたのにあまり思い出せないの。
心の中にじんわりと沁み込んだのは間違いないんですけど。
「ヘドウィグは永遠」
そう、私たちの心の中にいつまでもいます!